2020年に初めて国勢調査員の仕事を体験しました。
国勢調査員の仕事がどんなものなのか知りたい
実際にやってみようか迷っている
そんな人のお役に立てればと思い、
今回の国勢調査員の体験談を書き記すことにしました。
*仕事で知りえた個人情報は守秘義務がありますのでもちろん語りません。
国勢調査員の仕事を終えてからしばらく時間が経ち、
ちょっと忘れていることもあると思いますが、
それくらいのほうがちょうどいいかなと思いながら始めます。
Contents
国勢調査員を申し込む
居住する市の広報誌に国勢調査員募集のチラシが折り込まれていました。
ある程度時間に融通が利く個人事業主の仕事をしているため、
何でもやってみよう精神を発揮して軽い気持ちで応募しました。
しばらくすると説明会のお知らせの案内が送られてきました。
ん?これって採用されたってことでいいのかな??
面接とか一切していないけど…。
説明会会場で面接的なものがあるのかな?
ちょっとよく分からないまま説明会の日を迎えます。
国勢調査員説明会の会場での出来事
説明会会場には50名ほどの人がいたでしょうか。
年齢層は中高年者が圧倒的に多く、20~30代の若い人は数える程度。
机の上にはなにやら大きな青色の手提げカバンが2つ。
青いカバンの中にはぎっしり資料が入っていました。
カバン1つでも半端ない重さです。
10キロ近くあったのではないでしょうか。
説明会が始まると、
自分がすでに国勢調査員として正式に採用されていることを知ります。
申し込んだら即採用というのに一抹の不安を覚えます。
国勢調査員は希望者が少なく、
町内会の付き合いでしぶしぶ引き受けるような人も多い
と、のちのちネットの記事で読みました。
おまけに2020年はコロナ禍の影響でより希望者が少ないということで、
引き受けてくれる人なら誰でもOKなのか…という気持ちになりました。
説明会はコロナ感染防止のため、
説明は通常よりも短い、時短バージョンということでした。
それでも1時間程度はありました。
国勢調査員の仕事はなかなかに複雑でした。
仕事のマニュアルはかなりのボリューム。
この仕事内容を覚えるだけでも大変そう…(汗
と、しょっぱなから少し気が重くなりました。
説明会では時間の関係もあり、
本当に表面に触れる程度の説明しかありませんでした。
あとはマニュアルを読んでやってください。
分からないことは電話で聞いてください。
と、ほぼ丸投げ状態…。
高齢が進んでいる国勢調査員の方も結構いらっしゃったので、
この丸投げでこの方たち本当に調査員の仕事勤まるのかな…
それよりなにより、この方たちはカバン2つで20キロ近くあるような
この死ぬほど思い荷物を家まで無事に持ち帰れるのかな…
と余計なお世話を焼きながら、重い荷物を抱えて帰路につきました。
家に持ち帰り仕事内容を覚える
面倒な仕事に応募してしまったかもしれない…
と思いつつも気を取り直して、マニュアルを読みはじめました。
簡易マニュアルで作業の流れを理解し、
細かい部分は厚いマニュアルで確認していきました。
スムーズな訪問を実現させるために
訪問先で忘れずお伝えしなければならない事などを
自分なりにまとめた専用チェックシートを作成したり、
遅滞なくスラスラ説明できるよう事前に練習しました。
また、質問された時にすぐに答えられなければいけないと、
質問を想定して受け答えのシミュレーションをしました。
国勢調査のための山のような準備作業
私に与えられた担当世帯は100数十件。
1区画50件程度のエリア(調査区)を2つ割りあてられるのが基本なのだそうです。
事前準備は大きく分けて2つあります。
①担当エリアを実際に回り、エリアの地図作成をつくること
また、その地図に対応した世帯リスト(一覧表)を作成すること
②訪問する世帯に配布する資料(調査票)を準備すること
①足を使って回りながら地図を作成していきます。
地図にリストと対応させるための番号を振り、
地図とリストを作成していきます。
②は調査票を含めた資料一式を封筒にひとまとめに入れていく作業です。
調査票・資料・地図・リスト、これらすべて番号で連動しているため、
中に入れる資料はすべて同じ番号でまとめます。
また、その番号の封筒を一致した番号の世帯に間違いなく届ける必要がありました。
番号を正しく入れなければならない緊張感のなかでの、
自宅の狭いスペースで100件以上の世帯の資料の封入作業は
思った以上に時間のかかる作業です。
いざ国勢調査の訪問開始
ポスティングや訪問や決められた期間に実施します。
まず国勢調査に訪問しますよ的な事前告知のチラシの配布から。
そのあとで実際に訪問して説明と共に調査票をお渡しします。
「私は国勢調査員です。怪しいものではございません。」
ということを証明するための
首かけ名札と腕章、青いバインダーを必ず身につけて回ります。
基本的に不在時には再訪問します。
3回訪問しても不在ならポストに配布資料をポスティングするというのがルールです。
余談ですが、知り合いが住むマンションでは国勢調査員の1度の訪問もなく
配布資料がおもむろにポスティングされていた
ということを聞きました。
(インターホンは常に録画されるので訪問があったかの確認は可能)
TwitterなどのSNSでも
国勢調査員の信用を損なうような行為をする報告が何件もありました。
希望すれば通ってしまうような国勢調査員にあっては、
そりゃルールを守らず適当な仕事をする人が一定数でてくるだろうなぁ
と思いました。
ただでさえ訪問した時に不審がられたりいい顔されないことが多いのに、
こういう一部の残念な人の行動によってより国勢調査員のイメージが悪くなります。
不審がられるといえば、
訪問した際に不審に思われる最も大きな理由が個人情報の聞き取りでした。
・世帯主のフルネーム
・家族構成(男女各何人で住んでいるか)
この2点を確認しなければならないきまりなのですが、
この聞き取りが国勢調査員として本当に嫌でした。
大きなストレスでした。
そんな情報は前回の調査ですでに知っているはずじゃないの?
今目の前にいる人間は個人情報を聞き出そうとしている
国勢調査員を装った詐欺師かなにかではないか?
そう思う人がいても何の不思議でもありません。
国勢調査員を経験した人間からのお願いとして
「国勢調査員が訪問した際にこの2つは必ずうかがいますから」
ということを国が全国民に周知徹底してほしい
ということを強く思います。
この2点は聞かれるんだという事前の認識があれば、
「この2点以外の個人情報を聞き出されなければ問題ない」
という安心感が訪問される側に生まれます。
訪問する側もつらい対応をされなくて済むようになります。
このように一軒一軒担当エリアの世帯を訪問して、
国勢調査について直接説明をして調査票をお渡しします。
その際、ネットで回答されるか郵送されるかの確認をします。
これまで調査員が再訪問して調査票を直接回収することが多かったのですが、
今回コロナ感染防止のために原則回収はしないということになりました。
そうはいっても一部回収する世帯はあったと思いますが、
回収業務が劇的に少なくなっただけでも、
調査員の負担はかなり軽減されたと想像されます。
未回収者に対する督促作業
回収の締め切り前に
「もう国勢調査票記入終わってますか?まだなら急いでやってください」
というチラシを配布にポスティングします。
事前のチラシ配布、訪問、今回のチラシ配布
担当エリアの全世帯に最低3回は回る必要があります。
その上で不在者宅には最大プラス2回、
回収締め切り後の未回収世帯には督促訪問。
1件につき最大6回訪問しなければならない可能性があります。
未回収者には訪問して至急調査票を記入するように催促します。
気が重い仕事です。
回収状況の最終確認と調査票まとめ
ネットでの回答情報、郵送での回収状況をチェックします。
インターネットで自分の担当エリアの状況が随時確認できます。
回収状況の最終的な状況をリストに記載し、
直接回収した調査票をまとめたりなど、
最終的な書類の提出にむけた事務作業が最後にあります。
特に大変だった作業
私のエリアには大きな困難がありました。
それは築50年を過ぎた古いマンションです。
50以上の戸数がある比較的大きなマンションです。
その住宅にはインターホンがありませんでした。
部屋の住人の苗字を確認するような表札もありません。
さらには外国人労働者が多く住んでいました
いわゆる低所得者向けのマンションです。
今回の訪問では、
コロナ感染防止のためインターホン越しの会話を基本としてください
というお達しがありました。
まずそれができません。
必ず顔を合わせて会話しなければなりません。
ものすごく不機嫌な顔で扉を開ける住人は普通、
扉が開いた途端に「なんや!お前誰や!」とすごまれたり、
調査票の受取すら拒否して暴言を浴びせる住人もいました。
明らかに在宅しているのに居留守を使う人も非常に多かったです。
また、
一軒家ならほぼ間違いなく表札があり、
最低限その世帯の苗字だけでも情報収集できます。
しかしこのマンションには表札がなく苗字すら分かりません。
事前情報ほぼゼロ。
訪問時にすべての情報を聞き取らなければならないのに、
居留守、言葉の通じない外国人多数。
表札がないため住居している部屋なのかどうかの判断もはっきりつかない。
全くリストを埋められる気がしませんでした。
国勢調査員の仕事のメインは調査票の配布と回収ですが
リストの情報を埋めることも果たすべき大切な仕事の1つです。
リストを埋めなければならないのに、
マンション管理者などへの情報提供依頼は、
最終手段にしてくださいと言われました。
何度訪問しても不在だったら、
近隣の住人に聞いて回って(←これもどうかと思います)、
それでも情報が集められなかったら
マンション管理者に住人の基本情報を提供してもらうことも仕方ない。
というルールでした。
しかしそれではどうにも立ちいかない、絶対に無理だと思い市役所に相談しました。
最初はマンション管理者に確認しないでやってくださいと言われ、
頭にきて抗議したらOKになり、マンション管理者に事前に空室状況と苗字だけ教えてもらいました。
それでもそのマンションは調査票の配布と回収にはとても苦労しましたけど…。
そのマンション管理の方から
「同じ系列の古いマンションにも外国人が多く、国勢調査員では到底調査が難しいので、
そのマンションに関しては調査員に任せずに市の職員が対応しているようで、
市の職員の方から情報提供依頼の電話がこの前かかってきましたよ。」
という話を聞いて、
そんなところを情報提供なしにやらせようとしてたなんて!
と再び市の職員に腹を立てるのでした。
次は外国人の方の世帯の問題です。
調査票が読めない、訪問して説明ができない外国人の世帯があれば、
市役所に行ってその国の言語で書かれた調査票資料をもらいます。
簡単な対応集ももらえます。
しかし正直これだけで説明するのは非常に困難でした。
書き方を記した資料はその国の言葉で書かれているものの
記入する調査票自体はその国向け用になっていませんでした。
インターネット回答であれば日本語以外で数か国語での回答が可能でしたが、
私はそれ以外の言語の国籍の方に当たったので、本当に苦労しました。
これだけ外国人が多い現状で、この程度の対応ツールでうまく対応できる調査員なんて
本当に一握りだろうなと思います。
心がすり減るような心ない対応をしてくる人の存在も大変でした。
前述したように怒ったりすごんだりする人。
何度約束して訪問しても約束を破ってかかない人
こちらの個人情報を詮索してくる人
たまたま当たったエリアが良くなかったのだと思いますが、
嫌な気持ちにさせられる人に結構当たりました。
そんな中で、
ご苦労様といたわりの言葉をかけてくれる方には救われる思いがしました。
不安だったこと
・100件以上の個人情報を自宅で保管していることの不安がありました。
・訪問の際にその個人情報をすべて持ち歩く緊張感がありました。
・調査票の準備配布回収の際の、個人情報の入れ間違いに特に気を遣いました。
ですので、
いい加減な仕事をするような人には
この仕事を任せてはまずいだろうなと思いました。
なので担ってくれる人が足りないからと
誰でも彼でも節操なく仕事を任せるのは危険だと思いました。
ちゃんと人を選んで任命すべきです。
まとめ
最終的に最大限回収できた調査票とその他支給された備品などを持って
決められた場所に決められた日時に提出に出向きます。
その際、私たちと同様に雇用された調査票のチェックをする係がいまして、
私たち調査員が回収してきた調査票をチェックします。
私のチェック担当の人はゆうに70を超えているであろうご婦人。
しかしこのご婦人、なんとチェックの仕事をあまり把握していない。
後ろで指導する方にあれこれアドバイスを受けながらの作業で、
とんでもなく長い時間待たされることに。
おまけに後ろで指導する人よりもよっぽど私のほうが色々と把握していて
チェックを受ける側の私がほとんどチェックを先導する始末でした。
最後も結局こういうことかぁ(汗
これが現状なんだな…と思いました。
これが私の国勢調査員の体験記です。
5年後また国勢調査員をやりたいか?
と聞かれれば、
国勢調査員をやる上で大きなストレスになるような点を改善してくれて、
調査員の人手が足りず困っているということなら、
やってもいいかなと思います。
具体的には、
不審に思われて訪問先でひどい対応を受けることが減るような
なんらかの対策を講じてもらいたいです。
例えば、前述したように事前に確認する個人情報を周知させておくなど
あとエリアによって当たりはずれの差が激しいので、
業務の実施が困難なエリアに関しては、
事前に市がそれを把握した上でなんらかの手助けをしてほしいです。
実際に今回古いマンションの件で困って市役所に電話で相談した際に、
全く親身になってくれないどころか冷たいマニュアル対応をされて、
仕事を依頼している側のその態度に「二度とやるか!」と思ってしまったので。
今回担当した古いマンションをまた担当するなら絶対にやりませんw
ありがとうございました。